猫のごはん

猫の去勢・避妊後はフードを変える?太りやすさと量の見直し方

猫の去勢・避妊後はフードを変える?太りやすさと量の見直し方

「去勢(避妊)してから、うちの猫が丸くなってきた気がする…」
「手術のあと、フードは変えた方がいい?」
「量は減らす? どのくらい? おやつは?」

結論から言います。去勢・避妊後の猫は太りやすくなる傾向があるので、「フードの種類」より先に、「量」と「おやつ」の見直し、そして体重・体型の定期チェックを土台にしましょう。米国の獣医学会(AAHA/AAFP)のガイドラインは、去勢は猫の肥満の危険因子で、とくにオスで注意が必要、フードを出しっぱなしにする自由採食は食べ過ぎにつながりうる、としています[2]。日本の環境省も、パッケージの給与量は目安で、必要な量は避妊去勢の有無などによっても変わるので、定期的に体重をはかって調整するよう呼びかけています[1]。

この記事では、なぜ太りやすいのか、術後すぐのごはん、量の決め方(環境省と学会の2つの計算の比べ方と、計算例)、フードを変えるかどうか、体型のチェック方法、太らせないコツ、太ってしまったときの考え方、手術前後にやることの順番までを、環境省・学会・メーカー公式の資料をもとに、順番に整理します。

先に確認:自己判断せず、動物病院へ連絡した方がよいとき

  • 術後に丸1日以上、何も口にしない(嘔吐してしまった場合も、翌日までに回復の兆しがなければ)
  • 傷口が赤く腫れている、膿が出ている、痛がる様子がある
  • 持病があって、食事の量や種類に指示を受けている
  • 本格的なダイエット(減量)を始めたい、体型がBCS5(肥満)に近い
  • 体重の増加や減少が続いている、以前より遊ばない・ジャンプを避けるなどの変化がある

最初の3つは、ヒルズ(フードメーカー)の解説が獣医師への相談を呼びかけているケースです[3]。本格的なダイエットは獣医師の指導のもとで行うものと、環境省も示しています[1]。最後の項目は、体重の変化が続くなら獣医師に相談を、というヒルズの説明に沿っています[5]。

この記事の読み方(順番に説明します)

  1. なぜ去勢・避妊後は太りやすいのか(太りやすい条件、肥満の心配)
  2. 術後すぐのごはん
  3. 量の見直し方(2つの計算の比べ方、計算例)
  4. フードは変えるべきか
  5. 太ってきたかのチェック方法(BCS、記録のつけ方)
  6. 太らせないコツ(おやつ・出しっぱなし・遊び・食事場所・多頭飼い)
  7. 太ってしまったときの考え方
  8. 手術前後にやることの順番
  9. よくある質問

猫は去勢・避妊後に太りやすい?学会とメーカーの説明

学会の整理:去勢は肥満の危険因子、自由採食は過食のもと

AAHA(米国動物病院協会)とAAFP(猫臨床医協会)の2021年のガイドラインは、猫のエネルギー必要量は、年齢・体型(BCS)・去勢の有無・健康状態・活動量などに左右されると説明しています。そのうえで、去勢は猫の肥満の危険因子で、とくにオスで注意が必要、体重増加を防ぐために食事のエネルギー制限が適切な場合がある、自由採食は飼い主がよく使うが、過食につながりうる、と書いています[2]。

メーカーの説明:食欲の増加と、消費エネルギーの低下

ヒルズの解説(メーカーの解説で、公的機関の資料ではありません)は、太りやすくなる理由を2つ挙げています[3]。

理由ヒルズの説明(要約)
食欲が増える性ホルモンの分泌が減る。これらのホルモンには食欲を抑える働きがあるため、食べる量が増えやすくなる
消費エネルギーが減る活動量が減り、穏やかに過ごす時間が増える傾向。1日の消費エネルギー(基礎代謝)が約20%下がると言われている

「約20%」という数字は、ヒルズの記事で出典が示されておらず、今回、元の研究は確認できていません。「食べる量は増えやすく、使うエネルギーは減りやすい」という方向性として受け止めるのが無難です。

ポイント:「必ず太る」わけではない

学会の言い方は「危険因子」で、必ず太るとは言っていません[2]。環境省も、必要な栄養の量は季節や運動量、性別、避妊去勢の有無などで変わるとしています[1]。手術前と同じ量のまま、観察せずに続けないことが大切です。

去勢・避妊後に重なりやすい「太りやすい条件」

ヒルズは、太りやすさには食事量だけでなく、生活環境・年齢・避妊去勢後の変化も関わるとして、次のような猫に注意するよう書いています[5]。

条件ヒルズの説明(要約)
避妊・去勢後手術前と比べて必要なエネルギー量が変わることがある。以前と同じ量を与え続けると、摂取が消費を上回って体重が増えることがある
室内で運動量が少ない安全に暮らしていても、遊ぶ機会が少なければ消費エネルギーは減る。欲しがるたびに与えると、必要以上のカロリーになりやすい
高齢活動量が減ることがある。ただし病気で体重が減る場合もあり、「高齢だから太る・痩せる」とは単純に言えない

肥満が心配な理由:猫の肥満は珍しくなく、病気のリスクにもつながる

AAHA/AAFPのガイドラインは、猫の肥満の割合は、発表された研究で1.8〜40%と幅があるとしています。そして、体重過剰や肥満は、糖尿病、跛行(足を引きずること。骨関節炎や軟部組織の損傷が関係していると考えられている)、アレルギーではない皮膚の病気、尿道閉塞などの慢性の病気になりやすくすると書いています。1つの研究では、口の病気が増えるとも報告されています[2]。ヒルズも、肥満は糖代謝との関連が指摘されているほか、体重が増えて関節への負担が増える場合がある、としています[5]。

ただし、体重だけで病気の有無は判断できません。体重の増加とあわせて気になる症状がある場合は、動物病院で確認してもらいましょう[5]。「元気だから問題ない」と決めず、定期的な記録を続けることが役立つ、とヒルズは書いています[5]。

術後すぐのごはん|帰宅直後は「いつもより少なめ」から

ヒルズの解説では、麻酔の影響で術後すぐは胃腸の働きが落ちていて、吐き気が出ることがあります。帰宅直後は少量の水で様子を見て、食欲がありそうなら、いつものフードを通常の1/3〜半分程度の量で与える、と説明しています。嘔吐したり、食欲が戻るまで時間がかかっても、翌日までに回復の兆しが見えれば心配しすぎなくてよい一方、丸1日以上何も口にしない場合は獣医師に相談するよう案内しています[3]。

これはヒルズ(メーカー)の一般的な説明です。手術を受けた動物病院から食事の指示があれば、必ずそちらを優先してください。術後の安静と傷口のケアについても、ヒルズは、帰宅後数日はジャンプや激しい動きを避けて静かな部屋で過ごさせること、エリザベスカラーや術後服の指示があれば守ること、傷口が赤く腫れる・膿が出る・痛がるときはすぐ動物病院に連絡することを書いています[3]。

手術の時期と、子猫のうちの手術

手術の時期は、ヒルズの解説では、一般に生後6か月前後(初めての発情を迎える前)が推奨されることが多い、とされています。ただし、成長具合や健康状態で変わるので、獣医師と相談して決めるよう書かれています[3]。環境省は、猫の成長期を生後約50日〜1年程度としています[4]。つまり、生後6か月前後で手術を受けた猫は、まだ成長期の途中ということになります。

量の見直し方|環境省(2018年版)と学会の2つの計算で「目安」をつかむ

まず、目分量をやめて、計って与える

ヒルズは、目分量でフードを与えず、パッケージの給与量を目安にしつつ、キッチンスケールなどで正確に計量するよう呼びかけています[3]。環境省も、パッケージの給与量は目安で、必要な量は季節や運動量、性別、避妊去勢の有無などによって変わるので、定期的に体重をはかって調節するよう示しています[1]。

環境省の計算式:RER(安静時のエネルギー)× 係数

環境省のガイドライン(2018年版)は、RER(安静時エネルギー要求量、kcal)=体重(kg)×30+70(体重2〜45kgの場合のみ計算可能)、1日あたりのエネルギー要求量(DER)=RER×係数という簡易式を示しています。計算例は体重5kgの猫(避妊去勢済み)で、RER=5×30+70=220kcal、猫の係数1.2をかけて264kcalです。係数は成長段階や活動量によって変わるので、詳しくは獣医師に相談するよう書かれています[1]。なお、改訂前の版には、体重に係数(不活発70・活発80)をかける表が載っていましたが、現行の2018年版では、この簡易式に変わっています[9]。

学会の考え方:体重 × 係数(去勢済みの成猫は1.2〜1.4)

AAHAの2021年の栄養・体重管理ガイドラインは、RER(安静時エネルギー量)=体重(kg)の0.75乗 × 70を出発点にして、必要量(MER)=RER × ライフステージの係数で求める方法を示しています。猫の係数は、去勢済みの成猫が1.2〜1.4、避妊去勢していない成猫が1.4〜1.6、運動しない・肥満になりやすい猫が1.0、減量中が0.8、成長期の子猫が2.5です[7]。同じ資料は、室内で動かない猫は、表の値より少なくてよい場合があること、調整は体重とBCSを見ながら行うことも付け加えています[7]。

2つを並べると、近い範囲になる

環境省の計算式(避妊去勢済みの猫の係数1.2)と、AAHAの計算(去勢済みの成猫、係数1.2〜1.4)を、同じ体重で並べました。環境省の3kgと4kgの数字、AAHAの数字は、式を当てはめた筆者の計算です(5kgは環境省の計算例の数字です)。

体重環境省(2018年版)
RER×1.2(kcal/日)
AAHA・去勢済み成猫
(RER×1.2〜1.4)
3.0kg約192約191〜223
4.0kg約228約238〜277
5.0kg264(環境省の計算例)約281〜328

※環境省の計算例は「避妊去勢済み」の猫が対象で、係数1.2は例として示された数字です(活動量などで変わります)[1]。AAHAの列は、体重の0.75乗×70に係数1.2と1.4をかけた筆者の計算で、表の数字そのものは資料にありません[7]。

2つの出典は、去勢後の成猫なら、おおむね近い範囲の数字になります(4kgなら230〜280kcal前後)。ただし、どちらも「出発点」で、実際の量は、体重とBCSの変化を見ながら少しずつ調整する、と書かれています[1][7]。

具体例で確認:フードは何gか

以下の例では、フードのカロリーを「100gあたり380kcal」と仮に置きます。これは説明用の数字で、資料にある数字ではありません。実際は袋の表示(kcal/100gなど)で必ず確認してください。

例考え方結果
例1
4kg・避妊去勢済み(環境省の式、係数1.2)
228kcal ÷ 3.8kcal/g約60g/日
例2
4kg・去勢済み成猫(AAHA)
238〜277kcal ÷ 3.8kcal/g約63〜73g/日
例3
おやつの上限(環境省は1日のエネルギー量の20%以内)
228kcal × 20%おやつは約46kcal以内。与えた分は主食から引く
例4
おやつ30kcal(仮)を食べた日
主食は 228 − 30 = 198kcal → 198 ÷ 3.8主食は約52g(例1の60gから約8g減らす)

おやつの上限(20%)と「与えた分だけフードを減らす」は、環境省の記述です[1]。例3・例4の数字は、その考え方に仮の数字を当てはめた筆者の計算です。

注意:この値は「正解」ではなく出発点

  • 係数は成長段階や活動量で変わります。環境省も、詳しくは獣医師に相談するよう書いています[1]
  • 去勢後は、低めの係数から様子を見る、という考え方は筆者の整理で、資料に書かれたものではありません
  • 2〜4週間ほど、体重と体型を見て、増える・減るに応じて1〜2割の範囲で少しずつ量を直す、という具体的な幅は、筆者の目安で、資料にはありません
  • 迷ったら、手術を受けた動物病院に、その子の給与量を相談

フードは変えるべき?|資料によって言い方が分かれる

資料言っていること
ヒルズ(メーカー)最も効果的な対策はフードの切り替え。カロリーや脂質が抑えられ、満腹感を保つ食物繊維が多い「避妊・去勢後用」「体重管理用」を検討。1週間程度かけて少しずつ混ぜて移行[3]
AAHA/AAFP(学会)体重増加を防ぐため、食事のエネルギー制限が適切な場合がある。体重を減らす治療には療法食が適応。ただし、維持用のフードをただ減らすと、ビタミン・ミネラルが不足するおそれがある[2]
環境省ライフステージに合ったフードを。切り替えは猫の状態を見ながら1〜2週間かけて割合を増やす[4]。軽度〜中度の肥満は量を減らして体重を見る(後述)[1]

つまり、去勢後用フードが必須とは、今回の資料のどれも言っていません。ヒルズ(メーカー)は切り替えをすすめていますが、これは自社製品を扱うメーカーの見解です。学会は「エネルギー制限が適切な場合がある」としています。どちらにしても、量の管理が土台で、フードの切り替えは、体重の変化を見て、獣医師と相談しながら決めるのが無難です(筆者の整理です)。

切り替えるときの手順と、袋で見るところ

  • 一度に全部変えない。便と食欲を見ながら、少しずつ新しいフードの割合を増やす[5]。環境省は1〜2週間かけるとしています[4]。手順はドッグフードの切り替え方(犬の記事ですが、考え方は同じ)も参考に
  • 袋の「目的」が総合栄養食か、成長段階が合っているか、カロリー(kcal/100gなど)はいくつかを確認。見分け方は猫の総合栄養食とは?、袋の読み方はキャットフードの原材料・成分の見方
  • 体重管理用フードは、適した製品や給与量が猫によって違うので、減量幅が大きい場合や持病がある場合は獣医師と相談してから[5]

子猫のうちに手術したとき

成長期の子猫は、必要なカロリーが多いので、環境省は「大きくなるのがイヤだ」と与える量を制限しないよう呼びかけています[1]。AAHAの係数でも、成長期の子猫は2.5と、去勢済みの成猫(1.2〜1.4)より大きく設定されています[7]。手術後すぐに成猫用や減量用に切り替えるかは、今回の資料では確認できていません。自己判断で量を大きく減らさず、獣医師に相談してください。子猫の選び方は子猫のキャットフードの選び方をご覧ください。

太ってきたかのチェック|体重だけでなく、BCSで見る

体重だけでは判断できない

ヒルズは、猫は品種や骨格によって適正体重が違うので、「◯kgを超えたら太っている」と体重だけで判断はできない、体重に加えて肋骨の触れ方や腰のくびれも見る、としています[5]。

環境省の猫のBCS(5段階)

環境省は、猫の体型を5段階のBCS(ボディ・コンディション・スコア)で示しています[1]。

BCS状態体の特徴(環境省の記述を要約)
2やや痩せ背骨と肋骨が容易に触れる。腰のくびれは最小
3理想的肋骨は触れるが、見ることはできない。上から見て腰のくびれがわずかにあり、横から見て腹部の吊り上がりと、脇腹にひだがある
4やや肥満肋骨の上に脂肪がわずかに沈着するが、肋骨は容易に触れる。腹部の吊り上がりはやや丸くなる。脇腹のひだは適量の脂肪で垂れ下がる
5肥満肋骨や背骨は厚い脂肪におおわれて容易に触れない。腹部は丸く、腰のくびれはほとんど見られない。脇腹のひだが目立ち、歩くと盛んに揺れる

BCS1(痩せ)の記述は、表では省いています。なお、学会のガイドラインは9段階のBCSで、6/9〜7/9を体重過剰、8/9以上を肥満としています[2]。5段階(環境省・ヒルズ)と9段階(学会)では数字の意味が違うので、動物病院で「BCSはいくつ」と聞かれたら、どちらの段階かを確認しましょう(これは筆者の注意で、資料に書かれたものではありません)。

自宅でのチェックのやり方

  1. 触る:猫が立っている状態で、脇腹から肋骨のあたりをやさしく触る。薄い脂肪の下に肋骨を感じられるのが適正。強く押さえる必要はなく、嫌がるときは無理をしない[5]
  2. 上から見る:肋骨の後ろに適度なくびれがあるか[5]
  3. 横から見る:お腹のラインが大きく垂れ下がっていないか[5]
  4. 写真を撮る:同じ角度で撮っておくと、毎日見ていると気づきにくい変化も比べやすい[5]

ヒルズは、被毛の長さや体格によって、見た目だけでは判断しづらい猫もいるので、見た目・触った感触・体重の推移を組み合わせるよう書いています[5]。自宅での判断が難しいときは、体重の記録とあわせて動物病院でBCSを確認してもらうと分かりやすい、ともあります[5]。

記録のつけ方:手術前の体重を基準に

ヒルズは、術後は手術前の体重を基準に記録を続けると、増え始めたタイミングを把握しやすいとしています[5]。また、月1回など頻度を決めて触れておくと、小さな変化に気づきやすいとも書いています[5]。記録するものの例を表にします(項目は筆者の整理で、出典は本文中のとおりです)。

記録する項目ポイント
体重手術前の体重を最初の行に。同じ条件で、定期的に
体型(BCS・写真)月1回など頻度を決める。写真は同じ角度で
1日のフードの量(g)計った量。変えた日付も書く
おやつ・ごほうび誰が何をあげたか。カロリーも
活動量の変化遊ばなくなった、ジャンプを避けるなど(関節や病気のサインのことも)[5]

太らせないコツ|おやつ・出しっぱなし・遊び・食事場所・多頭飼い

1. 出しっぱなし(自由採食)をやめる

学会は、自由採食は過食につながりうる、体重を健康に保つにはカロリー摂取の観察とコントロールが必要、としています[2]。時間と量を決める方法に変える場合も、1日の量を何回かに分ける形が選べます。環境省の改訂前の版は、減量中の空腹感を抑えるために、1日量を3〜4回に分けて与える方法を挙げています[9](現行の2018年版にはありません)。

2. おやつは「与えた分だけ主食を減らす」

環境省は、おやつは1日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、与えた分だけ主要な食事の量も減らすよう呼びかけています[1]。ヒルズも、おやつを与える場合は、その分も1日の摂取量に含めて考えるよう書いています[5]。

なお、フードメーカーのいなばペットフードも、よくあるご質問で、おやつは主食の栄養バランスを損なわないために、1日に必要な総エネルギー量の約20%以内を上限としています。犬種・猫種や体重、普段の生活で必要な総エネルギー量は違うので、一般的な1日のエネルギー量の20%を上回らないように、パッケージの目安量を設定している、と説明しています[8](フードメーカーの公式サイトの記述で、公的機関の資料ではありません)。環境省の20%と同じ水準です。

3. 家族で、1日分を決めて共有する

ヒルズは、家族がそれぞれフードやおやつを与えていると、1日の総量が分かりにくくなるので、あらかじめ1日分を分けておくなど、家族で量を共有できる方法にすると管理しやすい、としています[5]。

4. 遊びと、食事場所の工夫で、動く機会を増やす

  • 1日15分程度の遊び(猫じゃらしなど)を取り入れる(ヒルズの提案)[3]
  • 一度に長く遊ばせるより、短い遊びを1日の中で何回か取り入れる方が続けやすい猫もいる。反応を見ながら、無理のない範囲で[5]
  • 食事場所を少し離して移動を増やす、キャットタワーを使うなど、生活の中で自然に動ける工夫[5]
  • 年齢や関節の状態で適した運動量は違うので、無理に動かさず、反応を見ながら調整[5]
  • 学会は、パズルトイ(フードが出てくるおもちゃ)や自動給餌器が、計画を続けやすくするのに役立つとしています[7](体重管理の計画についての記述です)

5. 「ねだる」ときは、食べ物以外の関わりを増やす

学会のガイドラインは、減量を始めた飼い主は、食べ物をあげることで愛情を示していたのができなくなり、最初の数日がいちばんつらいことがあるので、遊び・ブラッシングなど、食べ物以外の関わりを増やす計画にすることを勧めています[7]。去勢後は食欲が増えやすい(ヒルズ)[3]ので、ねだられたらその都度あげるのではなく、食事の回数や、遊びで応える形にすると、量を守りやすくなります(この言い換えは筆者の整理です)。

6. 多頭飼いのとき

多頭飼いで成長段階の違う猫(子猫とシニアなど)が一緒のときは、環境省のQ&Aが、フードを与える場所を変える、子猫はケージの中で食べさせて食べ終わったらすぐ片付ける、時間をずらす、といった工夫を挙げています[6]。1頭だけ食事を管理したいときも、同じ考え方で、食事の時間や場所を分けてください。改訂前の版には、他の猫が食べている場所に近づけないようにする、という記述もあります[9]。

すでに太ってきたときの考え方|急に減らさず、まず病院で原因を

まず、動物病院で健康状態とBCSを確認

ヒルズは、体重が増えた原因が、単純な食べ過ぎや運動不足とは限らないので、まず動物病院で健康状態とBCSを確認し、目標体重と減量方法を獣医師と相談するよう書いています。目標体重や減量ペースには個体差があり、自己判断で食事量を大幅に減らすことは避けるべき、ともあります[5]。

環境省の改訂前の版が示す、軽度〜中度の肥満の目安(現行の2018年版にはありません)

環境省の改訂前の版は、本格的なダイエットは獣医師の指導のもとで行うものとしたうえで、軽度〜中度の肥満なら与えるフードの量を通常の30〜40%減らして体重の変化を見る、1週間で体重が1〜3%減るくらいのペースで徐々に減らすのが適当、空腹感を抑えるために1日量を3〜4回に分ける、と説明していました。40%以上減らす急激なダイエットは体に悪い影響を与える危険があるとも注意しています[9]。現行の2018年版には、これらの数字は載っておらず、「本格的なダイエットが必要な場合には、必ず獣医師の指導の下で行う」とされています[1]。

例考え方(環境省の改訂前の版の目安を当てはめた筆者の計算)結果
いま1日80g与えている30〜40%減(×0.6〜0.7)約48〜56g
体重4.5kg週に1〜3%ずつ減らす1週間に約45〜135g
減らした48〜56gを、1日3回に分ける48÷3、56÷31回あたり約16〜19g

※これは、環境省の改訂前の版の目安(30〜40%減・週1〜3%・3〜4回)に、仮の数字を当てはめた計算例です。個々の猫に合う量は、獣医師が決めます。

学会の考え方:減量は、理想体重で計算し、係数を下げる

AAHAの2021年のガイドラインは、減量でも、健康で適正体重の猫と同じ原則を使い、理想体重をもとに計算して、係数を下げる(猫は0.8)としています[7]。また、体重を減らす治療には療法食が適応で、維持用フードをただ減らすだけでは、ビタミン・ミネラルが不足するおそれがあると注意しています[2]。これらを家庭で自己流に当てはめず、獣医師と計画を決めるのが安全です。減量で大変なのは、長期の見守りと維持で、続けられない飼い主が多いことも、学会は指摘しています[7]。

犬の話ですが、減量の考え方は犬のダイエットはフードで変わる?にもまとめています。

手術前後にやることの順番|チェックリスト

資料の内容を、時間の順に並べ直した、筆者の整理です。手術を受ける動物病院の指示があれば、そちらが優先です。

時期やること出典
手術前体重を測って記録する(基準になる)。体型の写真を撮る。時期や食事の指示を病院で確認[3][5]
帰宅直後〜翌日少量の水で様子を見る。食欲があれば、いつもの1/3〜半分程度から。静かな部屋で安静[3]
食欲が戻ったら病院の指示に従い、量を戻していく。戻した量を、目分量でなく、グラムで決める[3]
最初の数週間体重とBCSを見ながら、量を少しずつ調整。出しっぱなしをやめる、おやつは主食から引く、家族で量を共有[1][2][5]
その後月1回など頻度を決めて、体重・BCSを記録。遊びの時間を毎日。増える傾向なら量・おやつを見直し、続くなら獣医師に相談[3][5]

手術前に「前もってフードを減らしておく」べきかは、今回の資料では確認できていません。手術前の食事の指示(絶食の時間など)は、動物病院の指示に従ってください。

猫の去勢・避妊後のフード:よくある質問

Q. 手術の後、いつからフードを変えますか?

決まった時期は、今回の資料では確認できていません。ヒルズは、帰宅直後は通常の1/3〜半分程度の量から様子を見ることをすすめています[3]。切り替えるなら、環境省が示すとおり、1〜2週間かけて割合を徐々に増やします[4]。時期は、獣医師と相談して決めてください。

Q. 「去勢後用」のフードでないとダメですか?

必須とは、今回の資料のどれも言っていません。メーカーは切り替えをすすめ[3]、学会は食事のエネルギー制限が適切な場合があるとしています[2]。まずは量の見直しと、体重・体型のチェックから始めましょう。

Q. 手術のあと、どれくらいの期間で太り始めますか?

太り始める時期を示した資料は、今回確認できていません。ヒルズは、体重が増え始めた時期と、避妊去勢・年齢・生活環境の変化を照らし合わせると、見直す点を探しやすいとしています[5]。だからこそ、手術前の体重を基準に、定期的に記録しておくことが役立ちます。

Q. オスとメスで違いますか?

学会は、去勢は肥満の危険因子で、とくにオスで注意が必要としています[2]。ヒルズは、メスの避妊後もオスの去勢後も、太りやすさに向き合う必要があるとしています[3]。メスの避妊後の肥満リスクを、オスと比べた資料は確認していません。

Q. おやつはやめるべきですか?

やめる必要はありませんが、カロリー表示を確認し、与えた分だけフードを減らします[1]。上限は1日に必要なエネルギー量の20%以内(環境省)です[1]。上のコツと計算例(例3・例4)を参考にしてください。

Q. 食べ物をねだって鳴きます。あげてもいいですか?

ホルモンの変化で食欲が増える、とヒルズは説明しています[3]。1日の量を3〜4回に分ける方法は、環境省の改訂前の版が、減量のときの空腹感対策として挙げています[9]。ねだったらその都度あげるのではなく、回数と、遊び・ブラッシングで応えましょう[7]。食べない・食欲が落ちたときは猫がキャットフードを食べない原因を参考にしてください。

Q. 室内飼いで運動が少ないのですが?

ヒルズは、室内で安全に暮らしていても、遊ぶ機会が少なければ消費エネルギーは減る、とします。食事場所を離す、キャットタワーを使うなど、生活の中で動ける工夫を挙げています[5]。学会の係数でも、運動しない・肥満になりやすい猫は1.0と、去勢済みの成猫(1.2〜1.4)より低く設定されています[7]。

Q. 高齢になってから去勢・避妊した(または高齢で太ってきた)場合は?

高齢で手術を受けた猫の食事を扱った資料は、今回確認できていません。ヒルズは、高齢猫は病気で体重が減ることもあり、「高齢だから太る・痩せる」と単純には言えない、体重が増えた場合も減った場合も、その変化が続くなら獣医師に相談を、としています[5]。高齢猫のフードはシニア猫のキャットフードをご覧ください。

Q. 体重がどれくらい増えたら、受診した方がいいですか?

受診の目安になる増加量(◯kg、◯%)は、今回の資料では確認できていません。ヒルズは、体重の変化が続くなら獣医師に相談するよう書いています。また、肋骨が脂肪に覆われて触りにくい、腰のくびれが確認しづらいときは太り気味の可能性があり、自宅での判断が難しければ、動物病院でBCSを確認してもらうと分かりやすい、としています[5]。数字より、記録した変化の「方向」を見て、迷ったら早めに相談しましょう。

Q. 毛玉や食いつきの悩みも重なっています

毛玉ケアは猫の毛玉ケアはキャットフードで変わる?、食いつきは食いつきの良いキャットフードの選び方で整理しています。主食の考え方は猫の総合栄養食とは?をご覧ください。

まとめ|量・おやつ・体型チェックが土台。減量は獣医師と

  • 去勢は肥満の危険因子(とくにオス)。ただし必ず太るわけではなく、手術前と同じ量のまま観察しないことが問題
  • 術後すぐは、ヒルズでは通常の1/3〜半分程度から。丸1日以上食べない、傷口の異常は受診。病院の指示が最優先
  • 量は計って与える。環境省と学会の2つの計算は、4kgの去勢後の成猫なら、おおむね230〜280kcal前後。どちらも出発点にすぎない
  • 去勢後用フードは必須ではない。切り替えるなら1〜2週間かけて。量を減らすだけでは栄養不足のおそれ(学会)
  • 体重とBCSを、手術前を基準に、月1回など決めて記録。5段階(環境省)と9段階(学会)の違いに注意
  • 出しっぱなしをやめ、おやつは主食から引き、家族で量を共有。短い遊びと食事場所の工夫で、動く機会を増やす
  • 太ってきたら、まず病院で原因と健康状態を確認。40%以上の急な減量は危険。獣医師と目標体重・計画を

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この記事の参考情報

本文の[1]〜[9]をクリックすると、下の番号にジャンプします。各項目から、元の資料に移動できます。

  1. 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(2018年版)第4章「体調管理について」(エネルギー要求量の計算式と計算例、猫のBCSと体型、おやつの目安、体重測定) 第4章(PDF)
  2. AAHA/AAFP「2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines」の「Nutrition and Weight: Young Adult Cats」(2021年2月18日。去勢と肥満、自由採食、肥満と病気、9段階のBCS、エネルギー制限、療法食)。aaha.org(米国の獣医学会のガイドラインで、英語です。日本の公的機関の資料ではありません。ページには、フードメーカー等からの教育助成を受けて作成した旨の記載があります)
  3. ヒルズ(日本ヒルズ・コルゲート)「猫の避妊・去勢手術後の変化と注意点は?体重管理の対策も紹介」(2026年8月31日。太りやすくなる理由、術後の食事、体重管理)。hills.co.jp(フードメーカーの公式ページです。公的機関の資料ではありません)
  4. 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(2018年版)第2章「市販のペットフードについて」(猫の成長期の区分、フードの切り替え方) 第2章(PDF)
  5. ヒルズ「デブ猫かも?肥満の兆候とチェック方法、原因と対策を解説」(2026年9月22日。BCS、肋骨・くびれの確認、記録、太りやすい条件、生活の工夫)。hills.co.jp(フードメーカーの公式ページです。公的機関の資料ではありません)
  6. 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(2018年版)第5章「Q&A」(ライフステージの違う犬猫の多頭飼い) Q&A(PDF)
  7. AAHA「2021 AAHA Nutrition and Weight Management Guidelines」の「Weight Reduction in the Obese Pet」(2021年6月22日。エネルギー必要量の計算式とライフステージ係数(Box 1)、減量、パズルトイ・自動給餌器、食べ物以外の関わり)。aaha.org(米国の獣医学会のガイドラインで、英語です。日本の公的機関の資料ではありません)
  8. いなばペットフード株式会社「よくあるご質問」(総合栄養食・おやつ・総合栄養食タイプの定義、ちゅ~るの与え方と上限、缶詰・パウチの保管、賞味期限) inaba-petfood.co.jp(フードメーカーの公式ページです。公的機関の資料ではありません)
  9. 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」改訂前の版(猫のカロリー係数の表、肥満のダイエットの目安、多頭飼いのQ&A) 体調管理のページ(PDF)、Q&A(PDF)(2018年に改訂される前の版。現行版ではありません)
  • 環境省のガイドライン(2018年版)には、避妊去勢済みの犬と猫を例にした計算式があります(本文)。そのうえで、去勢・避妊後の猫に特化した日本の公的資料の記述は、今回確認できていません。環境省は、必要な量は避妊去勢の有無などによっても変わる、と書いています
  • 環境省のガイドラインは2018年に改訂されています。[1][4][6]は現行の2018年版です。体重に係数(不活発70・活発80)をかける表と、肥満のダイエットの数字(30〜40%減など)は、改訂前の版の内容で、現行版には載っていません([9])
  • 「基礎代謝が約20%下がる」はヒルズの記述で、元の研究は確認していません。「去勢後用フードの効果」は、特定の商品の効果を含め、確認していません
  • 手術後に成猫用・減量用へ切り替える時期(とくに子猫のうちに手術した場合)、太り始める時期、メスとオスの太りやすさの比較、高齢での手術後の食事、受診の目安となる体重の増加量、手術前に量を減らしておくことは、今回の資料では確認できていません
  • AAHAの計算式(RER=体重の0.75乗×70、係数)と係数は、同学会のガイドラインに載っているもので、AAHAの列の数字は筆者の計算です。ガイドラインの全文や引用元の研究は読んでいません
  • 「4kgなら約60g」「約63〜73g」「おやつ約46kcal以内」「主食約52g」「80gから48〜56g」などは、環境省の計算式・学会の係数・環境省(改訂前の版)の減量の目安に、仮の「100gあたり380kcal」などを当てはめた計算例です。資料にある数字ではありません
  • 「去勢後は低めの係数から様子を見る」「1〜2割の範囲で量を直す」「去勢後用フードは必須ではない」の整理、5段階と9段階を確認する注意、おやつを少なめにする判断、手術前後の順番表、記録する項目の表は、筆者の整理・判断です
  • 病気の診断・治療は獣医師が行うものです。この記事は、診断をするものではありません
  • いなばペットフードのおやつの上限(1日に必要な総エネルギー量の約20%以内)は、同社の公式サイトのよくあるご質問によるものです。同社の商品ごとの成分・価格・口コミは、この記事では扱っていません

この記事を書いた人

大手ペットフードメーカーでEC(通販)の責任者を務めている運営者が、公的な資料や学会・メーカー公式の資料をもとにまとめました。社名や特定の商品をすすめる目的ではありません。健康に不安があるときは、かかりつけの動物病院に相談してください。