
「キャットフードの袋に書いてある『総合栄養食』って、結局なに?」
「ウェットや缶詰だけで大丈夫?」
「おやつやトッピングは、どこまでOK?」
結論から言います。猫の毎日のごはん(主食)は、「総合栄養食」と書かれたフードを、水と一緒に与えるのが基本です。総合栄養食は、そのフードと水だけで、指定された成長段階の健康を維持できるよう栄養のバランスが整えられたもの、と定義されています[1]。一方、「一般食」「副食」「おやつ」「栄養補助食」は、それだけでは主食になりません。
この記事では、総合栄養食と書ける条件、ほかのフードとの使い分け、ウェット・ドライ・トッピングの考え方を、環境省とペットフード公正取引協議会の資料をもとに整理します。袋の細かい読み方(原材料・成分表)はキャットフードの原材料・成分の見方に書いたので、ここでは「主食をどう組み立てるか」に絞ります。
先に確認:総合栄養食を選ぶ前に、動物病院へ相談した方がよいケース
- 持病や病気の治療中(腎臓・尿路・消化器・アレルギーなど)で、療法食を使うか迷っている
- 食欲がない、元気がない、嘔吐や下痢が続くなど、体調の変化がある
- 急に体重が増減した
療法食は、獣医師の指導に基づいて与えるべきものと、公正競争規約で定められています[2]。環境省も、療法食の使用は獣医師の管理の下で行われるものとしています[1]。「総合栄養食」の表示は、病気の猫に合うことを意味しません。
この記事の読み方(順番に説明します)
- 総合栄養食とは何か(定義と、表示できる条件)
- 一般食・おやつ・療法食との違い
- 成長段階の表示(子猫・成猫・高齢猫)
- ウェット・ドライ・トッピングの使い分け
- おやつの量と、選ぶときの注意
- よくある質問
猫の総合栄養食とは?「フードと水だけ」で健康を保てるように作られたごはん
定義:毎日の主食として、水と一緒に与えるもの
ペットフード公正取引協議会(フードの表示ルールを定める業界団体)は、総合栄養食を「毎日の主要な食事として給与することを目的とし、そのペットフード及び水のみで、指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの」と説明しています[3]。環境省も、毎日の主要な食事として、新鮮な水と一緒に与えることで犬や猫の健康を維持できるよう栄養バランスが整えられたフードと説明しています[1]。
ポイントは2つです。
- 「水」が前提:新鮮な水がいつでも飲めることが条件に入っています。
- 「指定された成長段階」:子猫用の総合栄養食を、そのまま一生与えてよいという意味ではありません。
「総合栄養食」と書くには、基準を満たすことの証明が必要
協議会によると、総合栄養食の基準はAAFCO(米国の飼料検査官協会が定める栄養基準)をもとにしています[3]。表示するには、基準を満たしていることを分析試験または給与試験のどちらかで証明し、その方法を定められた形で記載します。協議会への届け出も必要で、表示できるのは協議会の会員です[2]。
| 総合栄養食の表示に必要なこと | 内容 |
|---|---|
| 対応する成長段階 | どの時期の猫向けか |
| 体重ごとの給与量・回数 | 袋に目安が書いてある |
| 証明の方法 | 分析によって証明か、給与試験によって証明かを記載 |
出典:ペットフード公正取引協議会の解説[2]を要約。
なお、この規約を守る義務があるのは協議会の会員社です。非会員には規約の罰則はありませんが、協議会は、市場にあるほとんどのペットフードがこの表示ルールに沿っているとしています[3]。
ここで押さえたいのは、総合栄養食の表示は「栄養設計の基準を満たしている」ことを示すもので、「その猫に合う」「おいしい」「安全が保証される」を示すものではない点です(これは定義からの筆者の整理です)。個々の猫に合うかは、食べ具合・便・体重・毛づやなどを見て判断します。
一般食・おやつ・療法食との違い|主食になるのはどれ?
目的別の一覧
| 表示(目的) | 位置づけ | 主食に? |
|---|---|---|
| 総合栄養食 | 必要な栄養素を含み、水と与えるだけで健康維持できるよう調整[1] | なる |
| 間食(おやつ・スナック) | コミュニケーションやごほうび用。限られた量を与える[1] | ならない |
| 一般食(副食・おかずタイプ) | 嗜好増進などが目的。総合栄養食と一緒に与える旨を表示[1] | ならない |
| 栄養補完食・カロリー補給食・サプリメント | 特定の栄養成分の調節やカロリーの補給が目的[1] | ならない |
| 療法食 | 特定の疾病などへの食事療法として使うことを意図。獣医師の指導のもとで[1][2] | 指示に従う |
見分け方:袋の「目的」を見る
袋には「猫用 総合栄養食」「一般食(総合栄養食と一緒に与えてください)」「間食」のように目的が書かれています[1]。見た目が缶詰やパウチでも、目的が「一般食」なら主食にはなりません。ちゅ〜るなどのペースト、犬用フードを猫に与える場合の話は、キャットフードの原材料・成分の見方で触れています。
注意:よくある勘違い
- 「ウェットだから主食に向いている」→ 食べ物の形ではなく、目的の表示で決まる
- 「高級そう・無添加っぽいから総合栄養食」→ 雰囲気では判断できない。袋の目的欄を確認
- 「療法食だから、うちの子に良さそう」→ 病気の猫向けに栄養が調整されたもの。獣医師の指導が前提
また、ペットフードは「食品」ではなく、食品の機能性表示食品や特定保健用食品のような、健康増進をうたう表示はできません[3]。療法食のみ病名の記載ができますが、フードで病気を予防・治療できるかのような表示はできません[2]。「◯◯に効く」という広告を見かけたら、距離を置いて見るのが無難です。
メーカー公式の説明の例(いなばペットフードのよくあるご質問より)
- 同社は、「総合栄養食」を、指定された成長段階で、ペットフードと水を与えるだけで必要な栄養バランスを満たし、健康を保つことを目的としたフードと説明しています。「おやつ」は、栄養補給のみが目的ではなく、おやつやご褒美、コミュニケーションの手段として与えるもの。「総合栄養食タイプ」は、間食(おやつ)のうち、総合栄養食の栄養規準を満たしたものです[5]。
- ちゅ~るには、おやつのタイプと、総合栄養食の基準を満たしたタイプがあります。おやつのちゅ~るは、総合栄養食を十分に与えたうえで、パッケージの給与方法にある本数を目安に使うよう案内され、上限は1日に必要な総エネルギー量の約20%以内です。おやつだけしか食べない場合は、必要な栄養バランスを満たした製品ではないため、続けるのはお控えください、としています[5]。
- 総合栄養食のちゅ~るは、パッケージの本数が「主食として本製品のみを与えた場合の目安量」です。必要な本数を与えるのが難しいときは、ドライフードと併用するか、おやつとして使うよう案内しています[5]。
- 「腎臓の健康維持に配慮」「下部尿路配慮」と書かれた製品は、病気に対応した療法食ではないので、疾患のある子には、獣医師に相談のうえ、療法食を使うよう案内しています[5]。
これは、いなばペットフード(フードメーカー)の公式サイトの記述です。公的機関の資料ではありません。商品ごとの区分・本数は、お手元の商品のパッケージの表示で確認してください。
成長段階の表示|子猫・成猫・高齢猫で、袋の書き方が違う
環境省のガイドラインでは、猫の成長段階を次のように区分しています[1]。
| 時期 | 目安(環境省) | 袋の表示例 |
|---|---|---|
| 哺乳期 | 誕生〜30日ぐらい(母乳。飲めないときは猫専用のミルク) | — |
| 離乳期 | 生後20〜60日ぐらい | 離乳期用/成長期用(やわらかくしたフードを少しずつ) |
| 成長期 | 生後50日から1年ぐらい | 幼猫期・成長期・グロース |
| 成猫期 | 成長期以降の7年間程度 | 維持期・メンテナンス |
| 中高齢期 | 約8〜10歳以降(中高齢期。成長期を終えてから7年間ほどの成猫期のあと) | 高齢猫期・シニア |
妊娠期・授乳期用や、全成長段階に使える「全成長段階・オールステージ」の表示もあります[1]。同じ「総合栄養食」でも、成長段階が合っていなければ、その猫の主食としては不適切です。子猫の選び方は子猫のキャットフードの選び方、シニアはシニア猫のキャットフードをご覧ください。
成長段階を切り替えるときは、環境省が、ある年齢になったからと急に切り替えるのはあまり良くなく、食べ慣れていないフードへ急に変えると吐いたり下痢をすることがあるとして、猫の状態を見ながら1〜2週間かけて新しいフードの割合を徐々に増やすよう呼びかけています[1]。
ウェット・ドライ・トッピングの使い分け|「総合栄養食」を軸にする
形で比べると:ドライとウェット
| タイプ | 特徴(環境省) |
|---|---|
| ドライ | カリカリとした食感で、重量あたりの栄養価が高い。比較的長期間保存できる(開封後の使用期限の目安は約1か月)[1] |
| ウェット | 缶詰・パウチ・アルミトレーカップなど、密封容器で加圧加熱殺菌された製品。風味がよく、食べやすい。開封後の使用期限の目安は1日で、食器に出した後は20分程度を目安に片付ける[1] |
どちらのタイプにも、総合栄養食と一般食があります。大事なのは「タイプ」ではなく「目的」です。
基本の組み立て方
- 主食は「総合栄養食」(ドライでもウェットでも可。成長段階に合ったもの)
- 食いつきを上げたいときは、主食に一般食やトッピングを足す。足した分、主食を減らして合計の量を保つ
- おやつは、量の上限を決めてごほうびとして使う
ウェットの総合栄養食と、ドライの総合栄養食を併用することも可能です。ロイヤルカナンの公式Q&A(犬用)では、ドライとウェットの両方を使う「ミックスフィーディング」で、ウェットは自然に水分を摂れる・低カロリーでたくさん食べられるとされ、どちらも総合栄養食なら比率は好みで調整できると説明されています[4]。これは犬用の製品についての記述で、猫については同じ資料では確認していません。猫のウェット・ドライの選び方は食いつきの良いキャットフードの選び方にまとめています。
ポイント:「一般食だけ」にしない
一般食は「一日に必要な栄養を満たすために、別途栄養補給が必要」または「同時に与える総合栄養食等の名称」を併記することになっています[2]。気に入った一般食だけを毎日続けると、栄養が偏るおそれがあります。袋に「総合栄養食と一緒に」とあれば、その通りに使います。
おやつの量と、選ぶときの注意
環境省は、おやつ(間食)は1日に必要なエネルギー量の20%以内を目安にし、与えた分だけ主要な食事の量も減らすよう示しています[1]。ロイヤルカナンの公式Q&A(犬用)は10%以内、おやつ分は主食を調整としています[4]。資料によって数字が異なるため、少なめを目安に、おやつ分は主食を減らすのが無難です(これは筆者の判断です)。
なお、協議会によると、総合栄養食の栄養基準を満たしたおやつもあります[2]。ただし、そのおやつの扱い(量の考え方)は袋の表示(給与量の目安)に従います。
猫が太ってきた、毛玉が増えたなど、悩み別の食事の見直しは、猫の毛玉ケアなどの記事も参考にしてください。
猫の総合栄養食:よくある質問
Q. 総合栄養食と書いてあれば、どれを選んでも同じですか?
同じではありません。総合栄養食は「基準を満たした」ことを示す表示で、原材料・成分の量・成長段階・食べやすさは製品ごとに違います。違いの見方はキャットフードの原材料・成分の見方で解説しています。
Q. ウェットフードだけで育てても大丈夫ですか?
表示が「総合栄養食」で、成長段階が合っていれば、主食として使えます[3]。一般食だけを続けるのは避けます[2]。ウェットだけを続ける場合の水分量・歯の健康への影響などは、今回の資料では確認できていません。かかりつけの獣医師に相談してください。
Q. 手作りごはんだけでも大丈夫ですか?
手作りごはんが、猫の栄養基準を満たせるかどうかについての資料は、今回確認していません。総合栄養食は、そのフードと水だけで栄養バランスが整うよう作られたもの、という位置づけです[3]。手作りを取り入れる場合は、獣医師に相談しましょう。
Q. 犬用の総合栄養食を猫にあげてもいいですか?
環境省のQ&Aは、犬と猫は必要とする栄養素が違い、たまたま少量を食べる分には問題が生じないが、長期的には特定の栄養素の過剰・不足が生じて健康上の問題を引き起こす可能性があるとしています[1]。猫には猫用のフードを選びましょう。
Q. 海外のフードの「complete and balanced」は、日本の総合栄養食と同じですか?
海外の表示と日本の「総合栄養食」の対応関係は、今回の資料では確認できていません。日本で販売されるフードは、日本の表示ルールに沿った表示があるかを袋で確認してください。
Q. 食べないときは、一般食に変えてもいいですか?
体調の確認が先です。元気があるのに食べないときは、一般食やトッピングで食いつきを助けつつ、主食の総合栄養食をできるだけ維持する方向で考えます。原因別の対処は猫がキャットフードを食べない原因にまとめています。
まとめ|主食は「総合栄養食+水」。一般食・おやつは足し算
- 総合栄養食は、そのフードと水だけで、指定の成長段階の健康を保てるよう作られた主食
- 表示には、分析試験または給与試験での証明、成長段階、給与量の記載が必要
- 一般食・おやつ・栄養補助食は、それだけでは主食にならない。見分けは、見た目ではなく袋の「目的」
- 成長段階は、子猫(成長期)・成猫(維持期)・高齢猫(シニア)で表示が違う。切り替えは1〜2週間かけて
- おやつは上限を決め、与えた分だけ主食を減らす。持病があるときは獣医師の指導を優先
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- キャットフードの大容量は買って大丈夫?保存方法・開封後の使い切りとウェットの扱い
- 猫の去勢・避妊後はフードを変える?太りやすさと量の見直し方
本文の[1]〜[4]をクリックすると、下の番号にジャンプします。各項目から、元の資料に移動できます。
- 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(2018年版)第2章「市販のペットフードについて」(目的別・水分含量別の分類、ライフステージ別の区分、フードの切り替え方)、第3章「ペットフードの保存方法」、第4章「体調管理について」(おやつの目安)、第5章「Q&A」(犬と猫の違い) 第2章(PDF)、第3章(PDF)、第4章(PDF)、Q&A(PDF)
- ペットフード公正取引協議会「表示の基礎知識 03.ペットフードの目的について」(総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食の表示事項) pffta.org(ペットフード業界の自主団体の解説です。公的機関の資料ではありません)
- ペットフード公正取引協議会「表示に関するQ&A」(総合栄養食の定義、AAFCO基準が元、規約の適用範囲、ペットフードと健康表示) pffta.org(同上)
- ロイヤルカナン ジャポン「子犬期のフードQ&A」(ミックスフィーディング、おやつの量)。royalcanin.com(犬用の記述で、フードメーカーの公式ページです。公的機関の資料ではありません)
- いなばペットフード株式会社「よくあるご質問」(総合栄養食・おやつ・総合栄養食タイプの定義、ちゅ~るの与え方と上限、缶詰・パウチの保管、賞味期限) inaba-petfood.co.jp(フードメーカーの公式ページです。公的機関の資料ではありません)
- 猫に必要な栄養素の具体的な数値(AAFCO基準の中身)、猫用の総合栄養食でとくに確認される栄養素は、今回確認できていません
- ウェットのみ・手作りのみで育てた場合の影響、海外表示と日本の「総合栄養食」の対応関係は、今回の資料では確認できていません
- ミックスフィーディングとおやつの10%は犬用製品についてのメーカー記述で、猫への当てはめは筆者の判断です。おやつの目安は環境省が20%以内、ロイヤルカナンが10%以内と資料で異なり、少なめを目安にしたのも筆者の判断です
- 特定の商品が総合栄養食の基準を満たしているか、個々のフードの品質の良し悪しは、この記事では判断していません
- 病気の診断・治療は獣医師が行うものです。この記事は、診断をするものではありません
- いなばペットフードの記述(総合栄養食・おやつ・総合栄養食タイプの定義、ちゅ~るの与え方と上限)は、同社の公式サイトのよくあるご質問によるものです。個々の商品の区分と本数は、この記事では確認していません。商品のパッケージで確認してください。同社の商品ごとの成分・価格・口コミは、この記事では扱っていません
この記事を書いた人
大手ペットフードメーカーでEC(通販)の責任者を務めている運営者が、公的な資料や業界団体・メーカー公式の資料をもとにまとめました。社名や特定の商品をすすめる目的ではありません。健康に不安があるときは、かかりつけの動物病院に相談してください。